需要と供給をつなぐ仲介の仕組みがうまく機能していないことにある。たいていの商品やサービスなら、卸売企業や小売企業による流通の仕組みが機能しているのに、翻訳の市場ではこの仕組みがなかったり、あっても効率が悪かったりする。たとえば出版翻訳の分野では、出版社からフリーの翻訳者に仕事が発注される。出版社と翻訳者を仲介する役割は、ほとんどだれも果たしていない。そのうえ、翻訳者はごく少数の出版社としか付き合っていないことが多い。ごく少数の気心の知れた編集者からしか仕事を受けない翻訳者もいる。出版社あるいは編集者の側からみれば、面識があり付き合いがある翻訳者に依頼するしかないので、出版したい本があるのに引き受けてくれる翻訳者がいない状況に陥りがちなのも不思議とはいえない。産業翻訳の分野なら、翻訳会社が多数あるので、仲介の役割を果たしていると思えるかもしれない。しかし、実態をよくよくみていくと、そうとはいえないことがわかる。